
病院理念・基本方針
ACPへの取り組み
しあわせ寿命 (ごきげん寿命)
21世紀となり、科学技術の進歩は目覚ましいものがあります。医療においては、再生医療や分子標的薬・生物学的製剤の開発をはじめ、多くの先進医療が導入されています。再生医療では、今で多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)から機能を持ったミニ臓器を分化誘導することができ、実物の大きさを得ることはできなくても試験管内で病気を模倣することで新規治療薬を見つけることができています。
日本では、平均寿命が伸び、男性は81.5歳、女性は86.9歳(2023年版世界保健統計)と男性はスイスに次ぐ世界第2位、女性は世界1位の長寿国となっています。1955年の日本人の平均寿命は男性が63.6歳、女性が67.8歳でしたので、約70年で男女共に20年間近く長く生きることが可能となりました。厚生労働省は、2040年には男性は83.3歳、女性は87.5歳と、さらに長寿となることを予想しています。まさに、超・超高齢社会の到来です。
一方で、近年、健康寿命という言葉があります。健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、日本では男性が72.6歳、女性が75.5歳であり、いずれも世界1位となっています(2023年版世界保健統計)。
それでは、平均寿命と健康寿命の差である、10年程の時間はどのように過ごすのでしょうか。この10年間は、医療レベルが向上しても縮まる気配がありません。我々は、この10年間をただ生きているだけでは、楽しくないと考えました。そして、平均寿命と健康寿命の間にあるであろう、健康上の問題で制限されていても、自身の価値観に合った生き生きとした生活ができる寿命をしあわせ寿命(ごきげん寿命)と呼ぶことにしました。
現在、2023年世界幸福度ランキングでは、日本は47位に甘んじています。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)
ACPとは、どのように生きたいかを相談する、生き方会議です。日本人は特に、家族に申し訳ない、迷惑をかけたくない、とする考えを昔から持っています。そのような国民性は非常に美しいものですが、誰も本人が大切にしていることをわからないままになってしまい、自己満足度が下がり、ひいては、ごきげんでなくなってしまいます。実際に、命の危険が差し迫った状態になると、70%の方が医療やケアなど自分で決めたり望みを伝えたりすることができなくなると言われています (Silveira, et al., NEJM, 2011)。
ここで大事なことは、ACPとは、最後に受けたい医療行為を決めておくことだけではないのです。安藤病院では、その方が、何をしたいのか、何を食べたいのか、大切にしていることは何か、を皆で考えることにしました。これは、広義のACP、ALP(アドバンス・ライフ・プランニング)とも言います。
チャットGPTを初めとするAI(Artificial Intelligence)技術の進歩は目覚ましいものがあります。基礎医学の分野でも論文用の英語を書いてくれますし、素晴らしい絵を描くこともできます。医師国家試験を解かせると、2018年から2022年の5年分全てで合格をしました。しかし、生き方に関わる問題は多様性があるため、模範解答がありません。ヒトがこれからも関わり続けなければならないことです。
安藤病院では、多職種(医師、看護師、介護士、理学療法士、居宅支援、ソーシャルワーカー)でACP Teamを作り、病院の枠を越えて関連施設と共に、地域の皆様にACPに関する情報発信を続けて参ります。それこそが当院が開設当初より大事にしている「人のことをもっともっと考える」ことなのだと考えます。
ACPを通じて安藤病院が目指すもの
ACPとは、対話を繰り返し、どのように生きたいかを考えるプロセス(過程)です。プロセスですので、経時的に変化があることは当然です。当院では、患者さんと、ご家族を含めたチームでACPを始める行動の壁を共に越え、時間と共に移り変わる変化を尊重します。
さて、ヒトの人生の必然は「生まれること」と「亡くなること」です。ヒトが生物である以上、この2つは避けることができません。Quality of Life(生活の質)という言葉があるように、我々は、人生の最終段階の質を、Quality of End stage (終末期の質)という概念で捉えています。対話を繰り返すことで、患者さんの自己コントロール感が高まります (Morrison, et al., J Am Geriatr Soc., 2005)。また、ACPの実践により、より患者さんの意向が尊重されたケアが実践されると、患者さんとご家族の満足度が向上し、ご遺族の不安や抑うつが減少すると報告されており (Detering K, BMJ, 2010)、患者さんが亡くなられた後も含めたQuality of End stageを高め得ると考えられます。
科学と想いの2つのエビデンスに基づいて、希望を繋ぐ連携を図ることが、超・超高齢社会の到来を前に、安藤病院が果たすことのできる役割だと信じています。
ACPキャラクター紹介

安藤病院ではACP(アドバンス・ケア・プランニング)に力を入れております。